山口地方裁判所柳井支部 昭和52年(ヨ)18号
申請人
赤松義生
右訴訟代理人弁護士
吉川五男
被申請人
大晃機械工業株式会社
右代表者代表取締役
木村貞明
右訴訟代理人弁護士
開原真弓
同
渡部邦昭
主文
一、本件仮処分申請を却下する。
二、申請費用は申請人の負担とする。
理由
一、本件申請の趣旨および申請の理由は別紙記載のとおりである。
二、よって、検討するに、本件記録ならびに関連事件記録(当庁昭和五二年(ヨ)第一八号出勤停止処分効力停止仮処分申請事件)によると、次の各事実を認めることができる。
(1)、被申請人会社(以下たんに会社という)は各種ポンプ等の製造、販売を業としていること、
(2)、福岡県嘉穂郡頴田町には、会社が九〇パーセント資本出資をして設立された九晃産業株式会社があって、各種ポンプ等の製造、販売を業としており、九晃産業株式会社の社屋内に、会社の九州出張所が設置されているが、九晃産業株式会社は、昭和五二年六月倒産し、以後ポンプの製造を中止していること、
(3)、会社の九州出張所の業務内容は、倒産した九晃産業株式会社が再建されたときいつでもポンプの製造が再開できるようにそなえておくための機械類の保守点検と、会社が販売したポンプ等の九州地区におけるクレーム処理が主たるものであるところ、同出張所には現在男女各一名の従業員が配置されているのみで、クレーム処理等アフターサービスは本社から出張させてまかなってきていたが、これでは顧客の要望に応じきれなくなったことから、アフターサービス並びに機械の保守点検のための人員を一名九州出張所に配置する必要が生じたこと、
(4)、申請人は、柳井工業高校を卒業して、昭和四八年九月、会社に期限の定めなく雇用され、機械工として勤務してきたものであるが、事情があって父は広島で、母は京都で生活しており、別居となっており、申請人は老令で病気がちの祖母(八〇才)、弟(高校三年生)と独身の叔父と同居し、申請人が中心となって家事を処理するなど事実上世帯主的な役割をはたしていること、
(5)、会社は、選考手続を経たうえで機械の保守点検ができ、しかもクレーム処理能力をも有している申請人を九州出張所に配転することに決め、昭和五二年八月一八日、申請人に対し、同月二五日付をもって九州出張所勤務を命じたこと、
(6)、これに対して申請人は、病気がちの祖母や高校在学中の弟の生活の面倒をみなければならない立場にあることや、九州出張所における仕事内容が従来経験したことのないものであるため不安があることを理由に転勤が不可能である旨告げて転勤命令の辞令の受領を拒否したこと、
(7)、そこで会社は、昭和五二年八月三一日、転勤命令の辞令を内容証明郵便で申請人に送達するとともに、申請人に対し、申請人が転勤命令を拒否したことは、会社の就業規則四〇条一項八号に該当するとして、同就業規則三八条一項三号により、同年八月三一日から同年九月六日までの七日間の出勤停止処分に付したこと、
(8)、会社は、その後においても申請人に対し転勤命令に応ずるよう説得を続けたが、申請人は前記の諸事情を理由にこれに応じなかったため、昭和五二年九月八日から同年一〇月七日まで三〇日間の出勤停止処分がなされたこと、
(9)、そこで申請人は、右二個の出勤停止処分の効力を争って、その効力の停止を求める仮処分申請を当庁に提起したこと、
(10)、会社は、申請人に対し、更に昭和五二年一〇月八日から同年一一月七日まで三〇日間の出勤停止処分を行ったこと、
(11)、右仮処分申請事件の手続中において和解が試みられたが、九州出張所在勤期間をめぐって、三年間を主張する会社と、昭和五三年三月末日までの期間を主張する申請人との間に折り合いがつかず不調に終ったこと、
(12)、前記出勤停止処分の期限の最終日である昭和五二年一一月七日申請人は会社に対し、不本意ながら九州におもむくが不当配転並びに不当出勤停止処分は法廷において争う旨および九州に赴任するについての業務上の指示を求める旨の内容証明郵便による意思表示をしたこと、
(13)、昭和五二年一一月八日、申請人は業務上の指示を求めて会社に出勤したところ、会社から、会社の方針に従って納得して転勤に応ずるのかと質問され、これに対して申請人は、内容証明に書いてあるとおりであるという趣旨の答えをしたこと、そこで会社は申請人に反省の様子がみえないとして懲罰委員会を開催して、申請人を懲戒解雇することに決めたものの、再度説得を試みたうえ反省して転勤命令に応ずるのであれば懲戒解雇の処分を撤回してもよい旨決定して、総務部長前田茂生をして、説得にあたらせることにしたこと、
(14)、そこで右前田総務部長は、申請人に対し、左記五点について申請人の意見を求めたこと、
(イ)、種々の行為をいたしましたが誠にすまなかった。今後は一生懸命仕事をする。
(ロ)、今日直ちに立看板を自身の手でとり除く。
(ハ)、不当配転および不当出勤停止ということは撤回する。
(ニ)、転勤は会社の方針に従って転勤する(九州出張所在勤期間の点も含む)。
(ホ)、今後はこのような行為はいたさないことが約束できる。
(15)、これに対して申請人は、
(イ)、一生懸命働くという点はよい。
(ロ)、できない。
(ハ)、できない。
(ニ)、回答留保。
(ホ)、回答留保。
とこたえ、転勤命令は家庭事情を考えていないからだめだとして結局説得に応じなかったこと、
(16)、このため会社は申請人に反省のいろがないとして懲戒解雇にすることとし、口頭で申請人にこれを告知するとともに昭和五二年一一月八日付懲戒解雇通達書を内容証明郵便により申請人に送達したこと、
以上の各事実を認めることができる。
三、そこで被保全権利の存否について判断することとする。申請人は、本件懲戒解雇が無効であると主張しその理由として先づ、申請人において本件転勤命令を拒否した事実がなく、たんに配転について話し合いをつくすよう要求しながら申請人の希望を申し入れてきていたにすぎず、しかも最終的には本件転勤命令に応じてそのための業務命令をあおいでいるのであるから、本件転勤命令を拒否したという理由でなされた出勤停止の懲戒処分は無効であり、このような無効な懲戒処分を前提としてなされた本件懲戒解雇もまた無効であるとのべている。
たしかに、転勤は本人の生活関係に重大な影響を与えることがあるので、事前に本人の同意を得たうえで転勤命令を出すのが理想的であるとはいえるけれども、本件の場合申請人は入社にさいして、会社の業務の都合により職場の異動を命じられたときは異議をのべない旨予め包括的に同意しているのであり、他に会社が転勤命令を発するについての手続上の制約があったとも認められないから、本件転勤命令が手続上違法無効であるということはできない。
そして申請人は、前記のとおり、本件転勤命令に対しては、家庭の事情等を理由として、転勤は不可能である旨の意思を表明し、かつ転動命令の辞令の受領を拒否したのであるから、申請人が本件転勤命令を拒否したものであることは明らかである。
ところで、前記のごとき申請人の家庭事情に鑑み、申請人がその家庭において相当重きをなしていることは認めうるけれども、祖母や弟の生活の面倒をみるという点については、他に扶養義務者(父母)がいることでもあり、代替的手段も可能と考えられる状況であるところ、他方会社においては、申請人をその九州出張所に勤務させる業務上の必要性、合理性があったことも否定できず、彼此勘案すると、申請人に存する家庭事情等の事由をもってしては未だ本件転勤命令を拒否する正当事由とはなしえないといわざるをえない。
従って、申請人において本件転勤命令を拒否したものとして、昭和五二年八月三一日、会社が申請人に対してなした七日間の出勤停止の懲戒処分は有効である。もっとも、就業規則三八条四号によると懲戒処分としての出勤停止の期間は七日以内と定められているから、会社が申請人に対してなした昭和五二年九月八日から同年一〇月七日までの三〇日間および同年一〇月八日から同年一一月七日までの三〇日間の各出勤停止の懲戒処分のうち、七日間を超える部分については、就業規則に根拠のない懲戒処分であって、この部分は無効と断ぜざるをえないが、七日間の限度内では有効と解され、また前記のとおり、昭和五二年八月三一日から同年九月六日まで七日間の出勤停止の懲戒処分は全部有効であるので、本件懲戒解雇の前提となっている出勤停止の懲戒処分が全部無効であるという申請人の主張は認められない。
もっとも、前記のとおり、申請人から会社にあてた昭和五二年一一月七日付内容証明郵便によると、申請人は九州へおもむくつもりである旨の意思を表明しており、外形的には転勤命令に応じたかのようにみえるのであるが、右書面自体には九州へおもむくのは不本意であるとか、不当配転、不当出勤停止処分は認められないので法廷で争う所存である旨のべており、また、申請人の右申出に応じて会社が申請人に対して示した九州出張所在勤期間については、態度を留保してこれに応じなかったことなどからみて、実質的には、最終的にも本件転勤命令を拒否したものと認めるのが相当である。
そうすると、申請人は拒否すべき正当事由がないのに本件転勤命令を拒否し、このことを理由に懲戒処分を受け、更に説得されたのに依然としてこれを拒否し続けていることになる。従って、本件懲戒解雇は、就業規則四一条一一号において懲戒解雇理由とされている「懲戒処分を受けなお悔悟の見込がないと認められたとき」には該当しないとする申請人の主張は理由がない。
次に申請人は、本件懲戒解雇の真の理由は、会社において、申請人が本件転勤命令や出勤停止処分に不満をもち争う意向を表明していること、右転勤命令や出勤停止処分を不当なものとしてその撤回をさせるためその不当性を広く市民に訴えるため宣伝ビラの配布や立看板を立てる等して言論、宣伝活動を行ったこと、右転勤命令、出勤停止処分を不当として裁判所へ提訴する意思を表明していたこと等の申請人の行為、態度を嫌悪してなしたもので、これは憲法一九条、二一条、三二条および民法九〇条に反するから無効である旨主張している。
たしかに、昭和五二年一一月八日、会社から申請人に対して示された転勤命令に応ずるための条件の中には、立看板の撤去や、不当配転、不当処分と言うことをやめることなどが要求されていたことは前記のとおりであるが、申請人において本件転勤命令を拒否したことも前記のとおりであって、この点から考えて、本件懲戒解雇が懲戒解雇事由もないのに、本件転勤命令および出勤停止処分に対してとった申請人の行為ないし態度を嫌悪してなされたものであると認めることはできない。
従って、この点についての申請人の主張も理由がなく、他に本件懲戒解雇が無効であると認めるべき資料は存しない。
四、以上説明したとおり、本件懲戒解雇が無効であるとする申請人の主張は理由がなく結局被保全権利の疎明がないことに帰するので、本件仮処分申請はこれを却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 増田定義)
申請の趣旨
一、申請人は被申請人の従業員たる地位を有することを仮に定める。
二、被申請人は申請人に対し昭和五二年一一月八日以降、毎月二八日限り金一一七、〇〇〇円を支払え。
との裁判を求める。
申請の理由
一、当事者
(一) 被申請人会社は、各種ポンプ、ロータリーブロア、汚水処理装置等の製造・販売を業としており、従業員数二百数十名を有している。
(二) 申請人は昭和四八年三月、柳井工業高校原動機械科を卒業後、同年九月、被申請人会社に期限の定めなく雇用された。以後、機械工等として同会社に勤務してきた。
二、本件懲戒解雇処分
(一) 昭和五二年一一月八日、被申請人は申請人に対し、懲戒解雇処分を行った。
右懲戒解雇につき、被申請人が申請人に対して送付した昭和五二年一一月九日付内容証明郵便によると
「懲戒解雇通達
あなたは本日懲戒委員会の決定の通り就業規則第四一条第一一号に基づき本日付をもって懲戒解雇したので通達しました」
との理由とされる。
なお被申請人会社就業規則第四一条第一一号は「懲戒処分をうけ、なお悔悟の見込みがないと認められたとき。」と規定している。
(二) 右懲戒解雇通告に到る具体的経過は以下のとおりである。
1、昭和五二年八月一八日、被申請人は申請人に対し、同年八月二五日から、被申請人会社九州出張所への配転を命じた。申請人は右配転命令が<1>何等の内示・意向打診等がなく、寝耳に水の全く突然の配転命令であったこと、<2>申請人には、家庭の事情(病身の老母(ママ)の生活の世話をしなければならないことや、高校生の弟等の面倒を見なければならないこと)から、右配転に応ずるのは困難であること、<3>果して右配転につき、真に業務上の必要があるか否か疑わしく、又申請人を選んだことに合理性があるかどうかの疑問があり、かえって申請人に対する報復人事の疑い(先の参院議員選挙で被申請人は民社党から立候補した柳沢れんぞうの選挙運動を従業員におしつけたが申請人はそれに協力しなかったこと)が強かったこと
等の理由から被申請人に対し、その撤回を求め、話し合いを尽すことを要求した。
2、配転命令についての申請人の右協議要請に対し、被申請人は配転を拒否したとして、昭和五二年八月三〇日、申請人に対し七日間の出勤停止処分を行い、さらに昭和五二年九月八日には同じ理由で就業規則にも規定のない三〇日間の出勤停止処分に処した。
3、右三〇日間の出勤停止処分につき、申請人は貴庁に対し、効力停止の仮処分を申請した。
右仮処分事件の審訊中に前記配転問題につき、貴裁判所の仲介により和解の話し合いがもたれた。
右和解の話し合い中には申請人に対する新たな処分をしないとの貴裁判所を通じての両当事者の合意にもかかわらず、被申請人は申請人に対し、さらに三〇日間の出勤停止処分を行った。
4、配転問題についての和解の話合いが、昭和五二年一一月五日不調に終った。
そこで、申請人は出勤停止期間が切れる昭和五二年一一月八日以降、九州出張所への前記配転命令に応じて九州出張所への赴任をする決意を固め同時に、右配転命令の不当性については提訴し法廷で争うことにしていた。
従って申請人は被申請人に対し、右同日内容証明郵便にて、不本意ながら前記配転命令には従うこと、そこで一一月八日の出勤停止処分明けの日は定刻に出社し、配転に関する業務指示を願いたいこと、但し配転・出勤停止については提訴し法廷で争う旨の意思を通告した。
5、昭和五二月一一月八日、申請人は定刻に出勤し、被申請人会社の業務指示を仰いだところ被申請人会社は申請人に対し、次の如き五項目の要求をしてきた。即ち、
(1) 九州出張所での仕事は一生懸命にすること、
(2) 申請人が前記配転命令、出勤停止処分の不当性を従業員や市民に広く訴えるため掲示している立看板を申請人自らが直ちに撤収すること、
(3) 前記配転命令・出勤停止処分につき、不当配転、不当処分と言うことをやめること、
(4) 配転には全て納得して応じること、
(5) 今までしたことに対し会社に謝罪し、今後このようなこと(会社の命令・処分に対し争うことを指すのであろう)をしないと約束すること、
右五項目の要求に対し、申請人は、右第一項目については、それを受け入れ一生懸命仕事をすることを約束した。しかし第二項目、第三項目の要求については受け入れることを拒否し、第四項目、第五項目については考慮の上返答すると答えた。
右申請人の回答に対し、被申請人はいきなり本件懲戒解雇を通告してきたのである。
6、なお、昭和五二年一一月九日、申請人代理人吉川が被申請人会社前田総務部長と電話で話をした際にも、右同人は吉川に対し、本件懲戒解雇理由は右5に記載のとおりである旨を答えている。
三、本件懲戒解雇の無効性
(一) 本件懲戒解雇はその通告書によると「懲戒処分を受け、なお悔悟の見込がないと認められたとき」を理由とする。
右処分理由中の「懲戒処分」とは前記第二項(二)の2、3に記載の三回にわたる出勤停止処分を指す。
右各出勤停止処分は、昭和五二年八月一八日付の九州出張所への配転命令に応じないこと(正確には右配転命令を拒否したものではなく、配転につき、話し合いを尽すことを要求し、再三申請人の希望を申入れたが、被申請人は配転についての自己の意向を強圧的に押しつけるために懲戒処分による恫喝を加えたもの)を理由として為されたものである。
従って本件懲戒解雇理由とされる「懲戒処分を受け、なお悔悟の見込がないと認められるとき」とは、出勤停止処分を受け、なおその出勤停止処分を加えられた趣旨に反する行為を継続したこと、即ち前記配転命令を拒否したことを指すのである。本件の場合、申請人は配転命令に応じ、そのための業務指示をあおいでいるので、配転命令を拒否したものではない。
右のとおり、本件懲戒解雇は就業規則上の根拠が全く存在しない懲戒解雇であり、右の点からしても、その無効であることが明白である。
(二)1、前記の如く、申請人が九州出張所への配転命令に応じたにもかかわらず為されたこと及び前記第二項(二)に記載の経過からして、本件懲戒解雇の真の理由とするところは以下の如くである。
即ち、
(1) 申請人が前記配転命令や出勤停止処分については、不満をもち争う意向を表明していたこと。
(2) 申請人が前記配転命令や出勤停止処分を不当なものとし、右不当処分を撤回させるため右処分の不当性を広く市民に訴えるため、宣伝ビラの配布や立看板を立てる等して言論・宣伝活動を行っていたこと。
(3) 申請人が前記配転命令・出勤停止処分を不当として、裁判所へ提訴する意思を明示していたこと。
右の三点にわたる申請人の行為乃至態度を嫌悪して懲戒解雇が為されたものである。
2、前記第二項(二)の5に記載の、被申請人会社が申請人に対し、従うことを要求した五項目にわたる要求事項のうち、第一項、「九州出張所での仕事は一生懸命に行うこと」その項目を除く他の四項は右1の(1)~(3)の申請人の行動に対して向けられ且つこれを抑圧する内容のものである。
3、ことさら多言を要するまでもなく、労働者が使用者に対し、その為した配転命令や懲戒処分等につき、不満を抱き、その処分の不当性を正当な権利に基づき争うことが許されることは自明の理である。
労働者が使用者の各種処分につき、心から納得するか又は不満を抱くかは労働者の内心の自由として憲法一九条で保障するところであり、使用者としては、この内心の自由に対し容喙できるものではない。
又、労働者が使用者の各種処分を不当として争う手段としては、広く市民に対しビラとか立看板等によりその不当性を訴えることは憲法二一条により表現の自由として保障された正当な権利である。実際、使用者に比して弱い立場にたつ労働者としては大衆宣伝により広く市民に訴えかけることが、極めて有力な手段であり、一般的にも広く行われている行為である。このような憲法で保障された表現の自由を禁圧し、それを解雇理由とすることは到底許されるものではない。
又労働者は使用者の各種処分につき、違法性を争い、裁判所へ提訴する権利をもつ(憲法三二条)。
配転命令や懲戒処分を違法として、裁判所へ提訴せんとすることを禁圧し、それを解雇理由とすることが許されないことは多言を要しない。
4、本件懲戒解雇の真の理由とするところは前記本項(二)の1に記載のとおりであり、申請人がこれら行動に出たのを理由として本件懲戒解雇が為されたものである。
従って本件懲戒解雇は憲法一九条、二一条、三二条及び民法九〇条に違反し無効である。
四、被保全権利
前記第三項に記載のとおり本件懲戒解雇は無効である。従って申請人は被申請人会社と労働契約上の権利・義務を有する地位にある。ところで申請人は本件懲戒解雇処分後もその解雇が無効であるため、毎日定時に被申請人会社に出勤し、会社の業務指示を求め就労を要求した。
しかし、被申請人は無効な本件懲戒解雇に固執し、申請人を就労させることを拒否し続けている。そこで申請人は止むなく、就労できず帰宅し自宅に待機している。
右のとおり申請人は被申請人との間の労働契約上の義務を履行しているのであるが、被申請人は労務の受領を拒否している。従って申請人は被申請人に対し民法第五三六条二項により反対給付たる賃金請求権を有している。
申請人は被申請人から得ていた賃金は、月給として金一一七、〇〇〇円である(昭和五二年八月分以降、本件懲戒解雇までの期間は、前記第二項に記載の如く、不当な出勤停止処分が為され正常な勤務につき得ていない。従って昭和五二年五月分~同年七月分までの三ケ月間の平均給与額により算出した)。なお被申請人会社における給料支払時期は、毎月二〇日締切りで当月の二八日に支給される。
よって申請人は被申請人に対し、昭和五二年一一月分以降毎月二八日限り、金一一七、〇〇〇円の賃金請求権を有する。
五、保全の必要性
申請人は何等資産・財産を有せず被申請人から得る賃金のみを唯一の収入源として生活している。現在雇用関係存続確認等請求本案事件を貴庁に提訴すべく準備中であるが、右本案判決の確定を待っていては、その間、申請人の収入の途とてなく、回復し難い損害を蒙るのである。